教科書いまむかし
教科書紹介 小学校算数編
3昭和43年(1968年)
学習指導要領「教育内容の現代化」
昭和32年、ソ連が世界初の人工衛星「スプートニク」の打ち上げに成功したのをきっかけとして、欧米を中心に科学教育向上の気運が高まりました。
数学教育においては、現代数学の急速な発展を背景に、集合論や位相数学などをとりいれたカリキュラム・教材が研究されるようになりました。こうした一連の流れは、数学教育の現代化と呼ばれています。
現代化の流れを受けた昭和43年改訂の小学校学習指導要領は、集合が学習内容として取り入れられるともに、「数学的な考え方」が一層強調されたものとなりました。
大日本図書では、昭和46年に『小学校 新算数』を発行し、その後昭和49年、52年に改訂をおこなっています。
ここでは、昭和46年発行の『小学校 新算数』を紹介します。
国立教育政策研究所
「学習指導要領データベース」
昭和46年(1971年)版 小学校 新算数 1〜6年-2
現代化の象徴としてよく取り上げられる「集合」は4年の目次に見られます。また、割合、式・公式、表・グラフを扱っていた数量関係が、関数、式表示、統計(集合を含む)を扱う数量関係に変更されました。
集合という概念
集合というと記号「{ }、⊂」や「空集合」などの用語を連想しますが、現代化当時の集合の概念は「算数」の全ての概念を明確にするために必要な基礎的概念と位置づけられていました。
指導書には「集合は新しい数学的な概念として取り入れられたものであるが、集合の考えは数・量・図形に関する諸概念を明確にするために常に必要な基礎的概念である。したがって『集合』という特定の領域があるわけではなく、数・量・図形の指導にあたって絶えず集合の考えを必要とするものであり、集合の考えを用いることによって数・量・図形についての諸概念が明確になるとともに、数・量・図形の指導を通して集合の概念が明確になり、そのよさも理解されるものであるといえる。」とあります。
集合の用語や記号「{ }、⊂」は4年で指導しますが、低学年ではあくまでも形式的な扱い方を排除して、具体的な場面に応じて集合の考えを育成するのが、集合指導のねらいであるととらえていました。
関数という概念
関数という概念も数量関係領域の新たな一項目として現代化の時代から登場しました。
一方の変化に応じて、他方の要素がどのように変化するか、その対応関係をみようとするもので、数学的な考え方の中核をなすものとして位置づけられています。
昭和49年(1974年)版 改訂 小学校 新算数 1〜6-2
昭和52年(1977年)版 新版 小学校 新算数 1〜6-2
小学校算数の教科書の変遷