転送速度:ビット毎秒/bps/SI併用 転送速度:ビット毎秒/bps/SI併用

定義:

s間に転送される bit

転送速度って何のこと?

通信やコンピュータのデータ処理で使われる,単位時間当たりに転送される情報量が転送速度です。

どれくらいの情報量(bit 数)が単位時間( 1 秒間)に届いたかを表すもので,転送しようとした情報すべてが届くのにかかる時間が求まることから,速度と表現されます。

例えば,100 KB からなるデータを 128 kbps で送ることを考えてみます。

KB は,キロバイトと読みますが,SI接頭語の k(キロ)と同じく 1000 を表すときと,情報量として扱いやすいように二進法を使った 2$^{10}$ = 1024 を表すときがあります。ここでは,1024 で扱いましよう。そして,1 B = 8 bit ですから,データを受け取るのにかかる時間は,次のように求まります。

$$ \begin{align} 100 \,\text{KB} \div 128 \,\text{kbps} &= 100 \times 1024 \times 8 \,\text{bit} \div 128 \times 1000 \,\text{bps}\\ &= 6.4 \,\text{s}\\ \end{align} $$
通信速度の変遷

音響カプラ Accoustic Coupler

1980年代,パソコン通信などには 音響カプラ が利用されていました。

音響カプラは,電話の受話器の受話部分と送話部分に接続して,データ通信を行うための機器です。

音響カプラ


接続,といっても密着させるだけのつくりだったので,外部からの音や振動に弱く,家庭では上から座布団をかけて運用されたりしていました。

音響カプラ

この音響カプラを利用した通信速度が,300 〜 1,200 bps 程度でした。

単位プラスのトップに使われているイメージ画像が,約 240 KB です。この画像を当時の環境,300 bps で表示させるのにかかる時間は,次のようになります。

$$ \begin{align} 240 \,\text{KB} \div 300 \,\text{bps} &= 240 \times 1024 \times 8 \,\text{bit} \div 300 \,\text{bps}\\ &= 6554 \,\text{s}\\ \end{align} $$

1時間49分14秒! 当時は通信するたびに通話料がかかっていたので,こんなものを送ったら大変です。

モデム Modem(Modulator Demodulator)

モデムは,デジタルデータを電話線で送受信できるアナログ信号に変換する機器です。

1985年に施行された電気通信事業法で,電話機の接続がモジュラージャックに変更されていきました。これによって,モデムが利用されるようになりました。

モデムの背面

このモデムを利用した通信速度が,14.4〜33.6 kbps 程度でした。

単位プラスのトップ画像の表示にかかる時間は,約 137 秒(14.4 kbpsのとき)です。情報を得るために訪れたサイトで,2分も待たされたらイライラしてしまいますね。

しかし,音響カプラ時代と比較すると劇的な進化です。当時は「読めないスピードで文字が表示される!」と衝撃をもって迎えられました。

ISDN(Integrated Services Digital Network)

1988年にデジタル通信網ISDNがサービス開始となりました。このISDNの通信速度は,64 kbps でした。

スマートフォンでデータ通信を使いすぎると,速度制限がかかることがありますね。このときの速度が,128 kbps ですから,その半分です。

単位プラスのトップ画像の表示にかかる時間は,約 31 秒 です。まだ,長いですね。

なお,当時はページのタイトルなどに大きな画像を使うページはあまり好まれませんでした。

ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)

2001年から,それまで接続のたびに通信料がかかっていたダイヤルアップ方式から,常時接続のサービスが普及し始めました。ADSL は,電話回線を使用しながら通話には利用されない帯域を利用して高速通信を実現したものです。

一般家庭におけるインターネットの利用では,ウェブサイトの閲覧などが主となるので,上り(送信)より下り(受信)の速度を高速に設定していました。それで,Asymmetric(非対称)という語がついています。

このADSLは,下り最大 1.5〜50 Mbps でした。M(メガ)は,1 000 000 を表す接頭語です(情報量のときには 2$^{10}$ × 2$^{10}$ = 1 048 576 とすることもあります)。これなら,単位プラスのトップ画像も約1秒で表示されます(1.5 Mbpsのとき)。

FTTH(Fiber To The Home)

2001年から,光ファイバーによる常時接続サービスも普及しはじめました。電話回線を利用したADSLに比べて,長距離でも安定した通信が可能です。当初は,従来の電話回線を利用できるADSLに比べて,光回線を新たに敷設しなくてはならないのでADSLに遅れをとっていましたが,光通信網の拡大に伴って利用者が増加していきました。

FTTHは,最大 10 Mbps 〜 10 Gbps です。G(ギガ)は,1 000 000 000 を表す接頭語です(情報量のときには 2$^{10}$ × 2$^{10}$ × 2$^{10}$ = 1 073 741 824 とすることもあります)。

1 bps ってどのくらい?

これまで見てきたように,1 bps というデータの転送速度は想像を絶する遅さです。

1 bps で文字列を転送している場面をアニメーションにしました。根気のある方だけご覧下さい。

このアニメーションで表示される8桁の数字は,文字コードです(bit を参照してください)。

そして,HELLO WORLD(こんにちは,世界)というのは,さまざまなプログラミング言語の入門期に画面に文字列を表示させるときに使われる言葉です。ちょうど9月20日(2019年)から,同名の映画が公開されたようですが。


ところで,アマチュア無線などでモールス通信(CW)をやったことがある方はいますか?

標準的なスピードで同じ文字列を送信すると,次のようになります。

モールス通信の方が,5倍以上速いです。