仕事率:馬力(仏馬力)/horsepower/非SI 仕事率:馬力(仏馬力)/horsepower/非SI

定義:

$735.49875\,$$\text{W}$

日本の計量法による定義:

$735.5\,\text{W}$

由来:

標準的なやく馬1頭の仕事率

$\text{PS}$ って何の略?
horsepowerなのに記号が $\text{PS}$? と疑問に思った人もいるでしょう。
実は,日本で使われている馬力の単位記号は,ドイツ語の馬力 Pferdestärke を略したものなのです。
馬力にあたる言葉は言語によって違うので,それを略した記号もさまざまです。例えば,フランス語では cheval-vapeur を略して $\text{ch}$,イタリア語では cavallo vapore を略して $\text{CV}$,オランダ語では paardenkracht を略して $\text{pk}$ と表します。

仏ってフランスのこと?
馬力という仕事率の単位を考案したのは,蒸気機関で知られるイギリスの発明家ジェームズ・ワットです。
ワットは,$1\text{ }$$\text{s}$ 間に $550\text{ lbf}$(重量ポンド) の力で物体を $1\text{ } $$\text{ft}$(フィート)動かす仕事率として馬力 $\text{hp}$ を定義しました。
このように,定義がヤード・ポンド法に基づいて行われたので,メートル法(国際単位系の前身)の国では馬力を再定義することになりました。
$1\text{ lb} = 0.45359237\text{ }$$\text{kg}$,$1\text{ ft} = 0.3048\text{ }$$\text{m}$ を用いて換算すると,次のようになります。
$$ \begin{align} 1 \,\text{hp} &= 550 \,\text{lbf} \cdot \text{ft/s}\\ &= 550 \times ( 0.45359237 \,\text{kgf} ) \times ( 0.3048 \,\text{m} ) \text{/s}\\ &\fallingdotseq 76.040 225 \,\text{kgf} \cdot \text{m/s}\\ \end{align} $$
この値をキリのいい数にした $75\text{ kgf}\cdot\text{ m/s}$ がメートル法の1馬力となりました。
両者を区別するため,ヤード・ポンド法で定義されたワットの馬力を英馬力,メートル法の馬力をメートル法発祥のフランスにちなんで仏馬力と呼ぶようになったのです。
1馬力(仏馬力)のイメージ
1馬力(仏馬力)のイメージ


なお,$\text{kgf}$(重量キログラム)とは,$1\text{ kg}$ の物体にはたらく重力を表す力の単位で,現在は使われていません。SI単位の $\text{ }$$\text{N}$(ニュートン)に換算するには,重力加速度 $9.80665\text{ }$$\text{m/s}^2$ をかけます。よって,$1\text{ PS}$ の大きさを $\text{ W}$ で表すと,次のようになります。
$$ \begin{align} 1 \,\text{PS} &= 75 \,\text{kgf} \cdot \text{m/s}\\ &= 75 \,\text{kg} \times 9.80665 \,\text{m/s}^2 \cdot \text{m/s}\\ &= 735.49875 \,\text{N} \cdot \text{m/s}\\ &= 735.49875 \,\text{W} \end{align} $$
日本の計量法では,この値をさらに丸めた $735.5\text{ W}$ を $1\text{ PS}$ として,自動車などのエンジンの出力にのみ使用が認められています。
馬1頭は1馬力?
馬1頭の仕事率が1馬力,定義はそうなっていましたが,馬の最大仕事率は1馬力より大きく,競走馬などでは3馬力ほどになります。ちょっと不思議な感じがしますが,馬力という単位は,馬の最大仕事率ではなく長時間にわたって出せる仕事率として考案されたものだからです。
人間が1日に摂取する食物のエネルギーから計算した人間の仕事率は,およそ 0.14 馬力になりますが,瞬間的には 1 馬力ほど出すことができます。

$1\text{ PS}$ ってどのくらい?
本日 2018年3月7日の13:30頃,東京で地表 $1\text{ }$$\text{m}^2$ に対する太陽の仕事率が,およそ $1\text{ PS}$ です。(快晴の場合。残念ながら曇りでした)
太陽高度による地表の単位面積が受け取る太陽光線の量は,図のようになります。
太陽高度と地表単位面積が受け取る太陽光線の量

地球の大気表面の単位面積に垂直に当たる太陽の仕事率を太陽定数といい,その値は約 $1366\text{ W/m}^2$ です。そのうちの 約 20 % は大気や水蒸気によって反射され,地表面には残りの 80 % が到達します。
2018年3月7日13:30の東京における太陽高度は 41.83 ° です。このとき地表面 $1\text{ m}^2$ での仕事率 $P$ は,次のように求められます。
$$ \begin{align} P &= 1366 \,\text{W/m}^2 \times 80 \,\text{%} \times \sin 41.83^\circ\\ &\fallingdotseq 728.8 \,\text{W}\\ &= 728.8 \div 735.5 \,\text{PS}\\ &\fallingdotseq 0.99 \,\text{PS} \end{align} $$
太陽高度と地表単位面積が受け取る太陽光線の量
単位の換算
空欄に数値入力することで,単位を換算することができます。
$\text{ PS}$ = $\text{ W}$
$\text{ PS(日)}$ = $\text{ W}$