素粒子観測施設2001.3.15
1. 施設の位置
東京大学神岡宇宙素粒子観測施設(Super kamiokande)や,東北大学ニュートリノ科学研究センター(KamLAND)は,地下約 1000 m にあります。しかし,施設の上に 1360 m の山がありますから,地中深く降りていくわけではありません。
また,観測データは,神岡町などの研究施設に送られ,そこで研究がなされています。
2. 入口
図でも説明しましたが,研究施設へは山の中腹から入ります。私は,エレベータで地下数千メートルに降りていくものと勘違いしていました。
この入口は,鉱山として使われていましたが,現在は施設への出入口にしか使われていません。
今回は4WDの普通乗用車で入りました。それでも,5〜600 m は下っていくようです。海抜にすると 0 m 付近に当たるそうです。
3. 坑内
坑内は,厚い岩盤で覆われています。この岩盤は日本で最も厚くて固い地域の一つだそうです。ここに施設を設置した理由の一つが,この地盤だそうです。
坑道は大型車が楽に通れるほどの幅がありました。埃がひどく,いたる所に横道があって,迷子になったら怖い雰囲気でした。
4. カムランド入口
カムランドへの入口です。工事中でした。
壁面は岩盤です。埃を嫌ってか,壁にはシートがしてありました。
左にあるはしご状のものは,配線するためのものです。すばる望遠鏡を見学したときにもたくさん見かけました。
5. 観測室入口
いよいよカムランドの内部です。
ここは,タンクの一番上の部屋になります。タンクは,直径 13 m の球形をしています。
この入口にも厳重な埃対策がなされていました。
ここには以前,東京大学のカミオカンデが設置されていたそうです。内部は想像していたよりも小さな部屋でした。
6. ゴンドラ
作業用のゴンドラがタンクの中央にありました。このゴンドラでタンクの内部に入るそうです。
工事中の現在は,内部での作業がかなりあるようです。
タンクは球体なので,壁面はどうやって作業するのでしょうか。
7. タンクの中
タンクの中をのぞかせてもらいました。
球体なので,壁面を見ることができませんが,下に光電子増倍管が見えています。ここも厳重に覆いがしてありました。
この中に「液体シンチレーター」という化学物質の混合液を約1000トン入れるそうです。この液体シンチレーターで,地表における環境放射能の1億分の1から100億分の1の極低放射能環境空間ができるそうです。これによって,今まで環境放射能の影響で検出が不可能だった現象が,検出可能になります。
8. 配線
びっしりと配線がしてあります。この1本1本が光電子増倍管からの線だそうです。数は聞きそびれましたが,1000本はあるのではないでしょうか。
これまで実現しなかった100キロ電子ボルトまでの超低エネルギー素粒子,ニュートリノ反応を検出するためのものです。この100キロ電子ボルトというのは,世界に例のない値だそうです。
9. 制御コンピュータ
光電子倍増管からのデータを制御するコンピュータです。
見学者のわたしたちもですが,全員この白い服を着て作業していました。この服は静電気を防ぐ服だそうで,これも埃対策のようです。わずか数グラムの埃でも,観測が不可能になってしまうほどのノイズが発生するそうです。
「太陽でできるニュートリノの地上での観測値は,理論値よりも少ない」その原因を突き止めるための努力は並大抵のものではありません。
10. スーパーカミオカンデ構内
こちらは,スーパーカミオカンデ構内です。大型水チェレンコフ宇宙素粒子観測装置と呼ばれているものです。
右側に「エレコトロニクスハット」が見えています。
5万トンの超純水を蓄えた,直径 39.3 m,高さ 41.4 m の円柱形水タンクの上部にあたります。
光電子倍増管は 11146本 と桁外れな数です。
観測の邪魔になる宇宙線を避けて,この地中深くに設置されています。
11. コントロールルーム
左上部の壁に,現在取得しているデータがモニターされています。
主にカミオカンデをコントロールするための部屋で,データなどは坑外の計算機棟に送られて解析されます。主な研究内容には,
1.大気ニュートリノの研究
2.太陽ニュートリノの研究
3.超新星ニュートリノの研究
4.陽子崩壊の研究
などがあるそうです。このうち,大気ニュートリノでは,ニュートリノに質量があることなどを成果として発表しています。
太陽ニュートリノの欠損も,近い将来には謎が解けそうです。
12. 制御用の機器
こちらはコントロールルーム手前にある制御用の機器です。細長い部屋は,地下にいるのだなあ,という感じがします。
超新星ニュートリノの観測は,カミオカンデにおいての観測から引き継がれています。
1987年2月23日,大マゼラン雲で発生したニュートリノを11例,世界で初めて観測したこと,まさにそれがニュートリノ天文学の幕開けとなりました。わが銀河内で起こるであろう超新星の爆発が待ち遠しいですね。
13. 水槽の模式図
水槽の模式図が展示してありました。
ニュートリノがこのタンクに進入してくると,水を反応して荷電粒子が高速でたたき出されることがあります。この荷電粒子が水中を高速で走るときに発生する青白い光(チェレンコフ光)を光電子増倍管で検出します。
このような反応はまれなので,標的となる水が大量に必要となります。また,この光は微弱ですから,光が減衰しないように超純水が必要になります。
★超純水とは,1万分の1mm 以上のゴミを 1 cc あたり 100個以下に抑えた水のこと
14. 光電子倍増管
スーパーカミオカンデで使用されている光電子倍増管です。
ケースの反射で見づらいですが,直径が 50 cm あります。世界最大の大きさです。
このガラスは,職人さんが手吹きで1つずつ作られているものだそうです。この大きさを吹ける職人さんは,日本に数人しかいないそうです。
15. 有馬朗人先生
スーパーカミオカンデの紹介の掲示と一緒に,有馬朗人先生の言葉がありました。
超新星ニュートリノの観測に成功してから14年。スーパーカミオカンデは,カムランドとともにニュートリノの観測において,世界をリードしながら宇宙起源の謎に迫りつつあります。