算数・数学な日々:日常生活の中にひそんでいる算数や数学的な事柄を編集部員が紹介します。

2013.10.7

データの活用アイコンじゃんけん大会における確率

先日,某アイドルグループでCDのセンターを決めるじゃんけん大会がおこなわれました。

全85人がトーナメント方式で6,7回戦(試合数はシードなどあり,個人差があります。)ほど勝ち抜くことで次のCDのセンターを決める一大イベントです。


グー チョキ パー

ところで,じゃんけん大会で6連勝し優勝するのはどれくらいの確率なのでしょう。


グー・チョキ・パーとあるから,1回勝つ確率は $\dfrac{1}{3}$ ?

それの6連勝だから $(\dfrac{1}{3})^6$ で…なんと $\dfrac{1}{729}$!?と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか?


しかし,このじゃんけん大会で優勝する確率は視点を変えてみればもっと単純なのです。

本来,6回戦のトーナメント方式であれば,参加者は64人。その中から1人選ばれる訳ですから,$\dfrac{1}{64}$ で良いですよね。

なぜ,さっきと確率が違うのでしょう? これはじゃんけんというゲームに「あいこ」があるからなのです。

じゃんけんで「あいこ」になる確率は $\dfrac{1}{3}$ です。しかし,「あいこ」の場合は続けてじゃんけんをして勝敗を決めますので,1勝する確率は「勝ち」か「負け」かの $\dfrac{1}{2}$ になります。


では,なぜ $\dfrac{1}{2}$ になるのでしょう?

じゃんけん1回戦で勝利するパターンは「あいこ」なしで勝利する確率 $\dfrac{1}{3}$ 。さらに「あいこ」の場合も考えると,「あいこ→勝ち」となるパターン($\dfrac{1}{3} \times \dfrac{1}{3} = \dfrac{1}{9}$)や「あいこ→あいこ→勝ち」($\dfrac{1}{3} \times \dfrac{1}{3} \times \dfrac{1}{3} = \dfrac{1}{27}$)などの「あいこ」が続くパターンを加えなければいけません。

これらの確率は初項 $\dfrac{1}{3}$,公比 $\dfrac{1}{3}$ の等比数列になるので,最終的に勝つ確率は等比数列の和となり,

$$ \begin{align} \frac{1}{3} + (\frac{1}{3})^2 + (\frac{1}{3})^3 + \cdots\\ \sum_{n=1}^{\infty} (\frac{1}{3})^n &= \displaystyle \lim_{ n \to \infty } \frac{ \frac{1}{3} \lbrace 1 - (\frac{1}{3})^{n-1} \rbrace }{ 1 - \frac{1}{3} }\\ &= \frac{ \frac{1}{3} }{ ( 1 - \frac{1}{3} ) }\\ &= \frac{1}{2}\\ \end{align} $$

の式のようになります。

それが6回戦なので,じゃんけん大会で優勝する確率は $(\dfrac{1}{2})^6$ で $\dfrac{1}{64}$ となり,参加者の人数と一致する訳です。


じゃんけんという誰でもできる単純なゲームの中にも,ここまで複雑な確率が隠されていると考えると,なんだか面白いですね。


ちなみに今回,優勝したアイドルは私と遠い親戚です。きっと私にもじゃんけんに強い才能が隠されているはず?


関連する教科書紙面

数学の世界2年 p.194,p.195

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たのしい算数6年 p.88

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