算数・数学な日々:日常生活の中にひそんでいる算数や数学的な事柄を編集部員が紹介します。

2013.7.21

数と式アイコン素数ものさし

先日,新聞で不思議な文房具を発見しました。

素数ものさし

先日,新聞で不思議な文房具を発見しました。

その名も「素数ものさし」!


京都大学生協で販売されているこのものさしは,「使いにくい」ということで人気沸騰中! ツイッターやインターネットの掲示板などで話題をよんでいます。

なんと3月の発売後3週間で1000本を売り上げたそうです!


素数とは「1とその数自身以外に約数をもたない自然数のなかで,1を除くもの」をさします。

すなわち,このものさしには素数である目盛り「2,3,5,7,11,13,17」しか目盛りがないのです(ものさし自体の長さは 18 cm)。


ここまで読んでみると,「使い物にならない」「測れない長さばかりじゃん」などという感想も出てきそうですが,実はひき算をすれば18以下の全ての自然数を一度で計測できてしまうのです!

例えば 1 cm を測りたければ,目盛りの2と3の間を使い測ります。さらに大きな数字でも,例えば 12 cm であれば,目盛りの5と17の間を使えば測ることができるのです。


全ての長さについて検証してみると…

測る長さ使う目盛り測る長さ使う目盛り
1 cm3 - 211 cm11
2 cm212 cm7 - 3
3 cm313 cm13
4 cm7 - 314 cm17 - 3
5 cm515 cm17 - 2
6 cm13 - 716 cm18 - 2
7 cm717 cm17
8 cm11 - 318 cm18
9 cm11 - 219 cm──
10 cm13 - 320 cm──

16 cm と 18 cm はこの定規自体が 18 cm なので,素数ではない18を利用しています。


ですが,実は,もっと長い素数ものさしがあれば 16 cm も 18 cm も測ることができます。

16 cm なら「19-3」,18 cm なら「23-5」です。



ここまでくると,全ての自然数は素数の差で表すことができるのでは?とちょっと好奇心で試したくなります。

続けて考察してみましょう。

測る長さ使う目盛り測る長さ使う目盛り測る長さ使う目盛り
1 cm3 - 211 cm1121 cm23 - 2
2 cm212 cm7 - 322 cm23
3 cm313 cm1323 cm23 - 2
4 cm7 - 314 cm17 - 324 cm29 - 5
5 cm515 cm17 - 225 cm!
6 cm13 - 716 cm19 - 326 cm29 - 3
7 cm717 cm1727 cm29 - 2
8 cm11 - 318 cm23 - 528 cm31 - 3
9 cm11 - 219 cm1929 cm29
10 cm13 - 320 cm23 - 330 cm37 - 7

残念ながら 25 cm で反例が出てしまいます。


そもそも素数は2以外は全て奇数であり,差で奇数を表そうとすると,「偶数−奇数」か「奇数−偶数」が必要になります。

素数には偶数が「2」しかありませんから,奇数は全て「奇数-2」の形で表してきました。

その形に従うと「25」は「27-2」となるのですが,「27」が素数ではないので,「25」を素数の差で表すことができないことになります。

同じように考えていくと,「33」「49」などがつくれない数字になります。


さらに数学の世界には「ゴールドバッハの予想」というものがあります。

「4以上の全ての偶数は,二つの素数の和で表すことができる。」という予想です。

しかし「全ての自然数は素数の差で表すことができる」という話はありませんので,25 cm や 33 cm などを測るには和の形を使う必要がありそうです(5cmを5回測るなど)。


何にせよ,使いにくさはともかく頭の体操になるものさしです。

ちなみに私は結婚式のご祝儀には,必ず素数を包みます。結婚式のご祝儀と言えば,割れるという意味合いの数字は2人が別れてしまうことを連想させるから偶数は良くないと言われますね。なので,割ることのできない素数,例えば「30000円」なら,小銭も包んで「30071円」にします。


関連する教科書紙面

たのしい算数5年上 p.102

たのしい算数5年上 p102